ニヤ伝
証の章 〜勇気と力と知恵の紋章〜
勇気の紋章
(承前)
東の神殿 ボスの間
そこには、6体の石像があった。
「…なんだ、あいつら…」
「なんか嫌な感じするわね…」
「お前いつになくまともなこと言うな。関心関心。」
2人がそんな会話をしているときに、石像は動き出す。
そのままの石像の状態ではなく、軟化して飛び上がるくらいの力を持った状態で…。
「…いやな感じは当たってたみたいだぞ…」
デットはそう言うと弓を出す。
石像は浮いたり落ちたりしながら移動する。
6体の石像が同時に着地するのだからその時の衝撃はものすごく大きい。床は激しい勢いで揺れる。
「デット、ちゃんとしなさい!」
「黙れ、揺れてる中で移動するのも、狙いを付けるのも無理なんだよ!」
デットは一番近くの石像に狙いを付け、矢を放つ。が、揺れているので照準がずれる。
矢は石像の横を通り抜け、壁に刺さる。
その隙に近付いてきた石像にデットは突き飛ばされる。
デットは揺れる床の中、身を起こす。するとそこにはさっき刺さった矢。
それを見つめるデット。その光景を焦れったそうに見るロザリオ。
「…へぇ…壁に伝わる振動は弱いのか…」
デットはそう呟き、矢を闇雲に打ち始める。
この部屋は不思議な構造をしている。縦に揺れているのに、壁には振動が伝わっていないようだ。
多分、床と壁がすこし離れているのだろう。ボス部屋特有の魔法か。
「ちょっと何してるのよ、大事な矢が無くなっちゃうでしょ!」
「あるんだよ、確実にアレを倒す方法が」
デットの後ろに石像が迫ってきている。それを確認しながらもデットは、矢を撃つ。矢が壁に刺さる前にデットは突き飛ばされる。
―それも、デットがさっきまで矢を打ち続けた場所に…。
デットはさっき打ち続けた矢の間に挟まれた。振動の中デットは矢に足を引っかけ、脇に矢を挟み、弓を構えた。
「・・・なるほどね、壁の振動は床に比べて少ない。矢を打ち続けその矢に体を挟んで照準を定めやすくする。
非常に簡単な手だけど効果は絶大。…矢を折られなければね」
デットは矢を6発、次々に撃った。
矢は石像に刺さり、石像は土へと姿を変えていく。
…ただ一体を除いては。
一体は血のような赤に染まり、デットの真上にいた。石像は勢いよく降下する。石像はデットを巻き込み、大きな音を立てて落下。
「うっ、ぁぅあっ…」
「生々しい声出すんじゃないの!」
「お前…人…が苦…しがっ…てる…ときに…そ…んなこと…言える…のか…?」
苦しみながらもツッコむデット。石像は浮き上がる。デットはその隙に立ち上がり、
落下してくる石像をよけた。石像は再び浮き上がる。
石像の落下地点には、穴が開いている。よほど強い衝撃なのだろう。弓を構え、石像を射抜くデットだが、利いていない。
軟化していると言っても、赤い状態ではかなり堅い。ダイヤモンドを射抜いているような錯覚に陥る。
デットは落ちてくる石像をよけ続ける。しかし、それはあまりにも無意味で…。
「…行き止まりか…。しかも周りは穴だらけでよけようにもよけられない…」
デットは迫り来る石像に戦慄を覚えた。そんなとき…。
―…あれは…―
デットは弓を構える。その狙いは…。
――石像の裏側にある小さなくぼみ…―
デットは矢を放つ。
弓をギリギリまで引き、勢いよく放たれたその矢はくぼみもろとも吹き飛ばし、石像を貫通。石像は勢いよく爆発する。
その爆風は、残りの床をも吹き飛ばしそうな爆発で、さっきの攻撃でひび割れていた、デットが立っている床も・・・。
東の神殿 正面玄関
デット達が落ちた先は、神殿の出入り口。
「…へぇ、神殿の出入り口の真上だったなんてな…」
デットが呟く。それは誰に対してでもなく、自然に出たものだ。
「ホント、仕掛けをクリアしてきた私たちが馬鹿みたい…」
「お前は何もしてないけどな…」
デットはロザリオにそう言う。少しばかりの沈黙が流れた後、2人は笑った。
「お前って変な奴だな…。都合のいいときだけ出てきて、変な所でボケたりして…」
ロザリオは何か言い返そうとしたが、何かを見つけたデットにそれは阻止された。
「これは…勇気の紋章…」
「何か文字が掘ってあるわね、なになに…?」
―いかなる状況下においても、決して諦める事無く、光を見つけようとせん心…それが勇気也…―
「一つ目、クリアか」
デットは笑顔で言う。
「ええ、そうね」
ロザリオは笑顔のデットを微笑ましそうに見ながら、言う。
「次に行きましょう」
勇気って緑っぽい感じしません?(しません