ニーヤの伝説
〜愛のデトニヤ劇場☆(待て〜

証の章〜勇気と力と知恵の紋章〜
  力の紋章


東の神殿 サハスラーラの隠れ家

「…ほう、勇気の紋章を手に入れおったか」

サハスラーラが言う。サハスラーラは振り向き、

「よし、ワシが知ってることを話してやろう、デット」

そう言った。

デットは、下を向いて黙っていた。


 ―出来れば、この爺さんの話は聞きたくないなぁ…―


しかし、話は逸れなかった上に、サハスラーラは重要な事ばかりを話していた。それを聞いていなかったデットは案の定…

「これ、ちゃんと聞いておったか?」

「ん?ぇえ?…あぁ、聞いてませんでした」

「ならば、もう一回話してやろう」

サハスラーラはもう一度口を開く。


「その昔の話じゃ。ニアリスの王国を守る一族がおった。

彼等は自分たちではその言葉を好まないが、周りの人間は尊敬の意をこめてこう言っとった。『ウールの一族』とな。

デットよ、お主はこの話を知っておるか?神話の続きの話じゃ。神の力を巡る戦いの話じゃ」

サハスラーラは、デットに問いかける。

「知ってますが、それがどうかしました?」

その言葉を聞いてサハスラーラは、当然と言いたそうな顔をして、話を続ける。

「その戦いに、ウールの一族が大きく関与しているのじゃ。

聖地が開きかけた時、野望を持った多くの者が魔物と化したのじゃ。

その魔物から7賢者を守るために戦ったのがウールの一族で、その戦いの後その殆どが息絶えたんじゃ。

しかし、不思議な言い伝えが残ってのう。『オオイナルワザワイの降りかかりし時、薄く蒼白く光りし剣を構えし勇者現れん。

其の者闇を断ち、悪を切り裂き、世界を善しなる方へ導くであろう』とな。

これが破魔の勇者伝説の元になってな、何でもその現れる勇者はウールの一族の血を引く者らしいのじゃが…」

「僕は、そんな話は聞いたことないですが…」

「まあ無理もない。これはもう一部の人物にしか伝わらぬ伝説となってしまっているのじゃから」

サハスラーラは視線を落とす。

「…こんな話しても仕方ありませんよ。それに、誰が勇者になるとか関係ありません。

僕は、誰のために戦ってるワケじゃないんです」

それを聞いてサハスラーラは顔を上げ、口を開く。

「そうじゃったな。だが、これだけは言える。否が応でも、お主はこの国を救うことになるじゃろう」

デットは立ち上がり、

「それで、どうせならその気でいろ、ですか?」

「キツくは言わん。今はお主の好きにせい、ワシはそれを見守っておる」

期待しないで見ててくださいね、そう言おうとしたかったのかしたくなかったのか、デットは建物から去っていった。

ロザリオもついていき、1人取り残されたサハスラーラはただ、デットの背中を見つめるだけだった。


「・・・頼むぞ、破魔の勇者よ。全ての鍵は、お主が握っておる。」

 

あやしの砂漠 砂漠の神殿前

あやしの砂漠。その名の通り、どこまで行っても果てが見えない。言えることはただ一つ。

砂漠の中央に祭壇があって、そこから神殿へと行けること。

デットとロザリオは砂漠の中央へとたどり着き、ロザリオの協力で神殿内部へと入っていった。


「…お前、ニアディス語読めるんだな」

「あったりまえよ。精霊を馬鹿にしないでよね?」

「精霊だったんだ…」


一瞬、沈黙した空気が流れた。


しかし、その沈黙は一発の光線によって破られた。

デットとロザリオは素早くかわしたが、光線が当たった箇所は溶けている。そして、光線の出所を見てみると・・・。


「何、あれ。キモイわぁ」

「…今はツッコまないけどさ、それはさておき…眼が回転してる…?」

デットはしばらく眼のついた柱を見つめていた。次の瞬間、デットと眼のついた柱は目が合い…、


「眼からビイイィィィィムッ!!」

「わかりづらいネタを使うな」

ツッコミながらもデットは光線をかわす。

どうやら、眼がセンサーの役割をしているらしく、侵入者を攻撃するようになっているのだろう。

デットは、自分の姿が「眼」に映らないようにして進み、奥にある仕掛けも突破し、神殿に隠された宝も見つけ・・・。


「…なんか、外に出ちゃったみたいね…」

「でも、入り口は違う。多分何処かに別の入り口があるはずだ」

案の定、入り口が別にあった。

デットは横穴に入り、奥へと進む途中、「眼」の柱が立っていたが、「眼」をあわせないようにして進んだ。

様々な仕掛けを乗り越え、ついにはボスの間の前まで来た。

「…行くぞ」
 

砂漠の神殿 ボスの間

ボスの間の扉を開けた瞬間、砂埃が舞った。砂のお陰でよく見えなかったが、恐らくは地面から何かが飛び出したらしい。

巨大ムカデか、巨大蛇か、はたまた鮫か…?

その答えはすぐに出た。


「きゃあっ!」

ロザリオの目の前を飛び出していく巨大なムカデ。

…いや、ムカデと蛇を足して2で割ったような奴か?どちらにしろ、コイツがボスであることは変わりなかった。

「くそっ…、砂埃でよく見えない…!」

「デット!いいのがあるわよ!」

そう言いロザリオが出したのは…

「…言っとくけど、この物語のベースは神々のトライフォースだぞ?ボス違うぞ?」

「ええ〜?いいじゃんいいじゃん、被ろうよー、面白いよー?」

「今は面白がってる場合じゃないと思うんだが…しかもここそんなに広くない…」

巨人の仮面。被ると巨大化する変な仮面。「ムジュラ」のロックビルの神殿のボス、ツインモルド戦で使用可能。

同じシリーズであるもののゲームが違うのでやはり使えない。しかしロザリオは巨大化していた。

「じゃあこれはどう?まことのメガネ〜」

「だからベースが違うって。」

まことのメガネを受け取りながらもツッコむデット。しっかり使う気でいてツッコむのは御法度ですよ。


デットは剣を構え、走り出す。砂埃の中できらりと輝く剣は地面を出ようとするムカデを捕らえ、斬ったと思われた。しかし…。

パリン。まことのメガネのレンズが割れる音がした。

同時にデットの腹部から勢い良く噴き出す血と共に突き出た石。思わず剣を落とし、片膝を着き、腹を押さえるデット。

その隙を狙うかのようにして襲いかかる3匹のムカデ。

デットはそれを見逃さずに見ていた。

そして…。


「まず、一匹…」

 

剣を持ち直し、一番近いムカデの頭を突く。

ムカデは突かれた箇所から徐々に亀裂が出来ていき、最終的に爆発。宙に浮いていた二匹のムカデは吹き飛ばされた。

デットは虚ろな目でムカデが吹き飛ばされるのを見ていた。

「けほ…、さっきのはキツかったかな…。だけど、次はこうはいかない…」

剣を背中に背負った鞘に収め、弓矢を取り出す。

幸い、砂埃は晴れているため、狙いは付けやすい。痛みを堪えながら、狙いを付けようとする。


(集中しろ…砂埃の出所を狙うんだ…)


デットは土が盛り上がって行くのを見た。逃すな。外しちゃいけない。

腹の痛みと出血を堪えるのがやっとで、動きを追うのもままならない状態だった。土の盛り上がりが限界まで来た。今だ。

デットは矢を放つ。

同時に飛び出すムカデ。迫り来る矢。避けようとするムカデ。

時間的には一瞬だったが、デットとロザリオにはその刹那が何十秒にも思えた。

デットの放った矢と、避けようとするムカデと、どちらが勝利するか。


…軍配が上がったのは、デットの放った矢だった。


爆風が部屋を覆う。残ったムカデは土の中に潜ったままだった。デットはムカデの消滅を確認、口元に微かな笑みがこぼれた。

しかし、その小さな笑みすらもムカデは消し去った。


デットの背後に飛び出すムカデ。それを見てデットは・・・。


「なっ・・・!」

ムカデはデットの肩に体当たりする。全身に激痛が走る。その場に倒れ込む。

砂の上に血が少しづつ、音を立てて滴り落ちる。むせ返るデットはしかし、砂の盛り上がった所に剣を突き立てた。

耳をつんざく咆吼があがる。ムカデの口が見える。咆吼が大きくなる。

砂がピリピリと音を立てて波打つ。そこからムカデの全身が見え始める。

ムカデの肉体は、直接的な外傷はないものの、着実に死へと向かっていた。

デットは、その姿をまじまじと見ていた。


…視界が、闇に消えた。



分割できないほど短い第3話なオチ(何