ニーヤの伝説
〜愛のデトニヤ劇場☆(待て〜

証の章〜勇気と力と知恵の紋章〜
  知恵の紋章


こうして二つ目の紋章を手に入れ、三つ目の紋章があるへブラ山へと足を運ぶ。

途中、イケニエにされた7賢者の祖父を名乗る老人に出会い、彼からマジカルミラーという鏡を手渡された。

そして…。
 

へブラ山 ヘラの塔前

「…ここがヘラの塔か…」

デットは目と鼻の先にある塔を見て言う。

「そうよ、ここがヘラの塔。最後の紋章がある所よ。あと…」

「あと…?」

ロザリオは顔を赤らめる。デットにはその意味が分かったようだが、黙っていた。

「私とデ―――

「訴えるぞ、そして勝つぞ」

何か言おうとしたロザリオを制しデットが言う。

「こういうのを訴えてどうしようってんのよ。それに元ネタも分かってるわよ」

「…どうでもいいが…、行くぞ」

 

ヘラの塔 正面玄関

ヘラの塔へと入ったデットを待っていたのは…。

「・・・行き止まりだな。」

「行き止まりね。」

珍しく意見が一致したデットとロザリオ。紅い壁が一面に張り巡らされている。

その向こうにはスイッチ。壁には覗き穴とブーメラン一個が抜けられそうな穴が。いずれも見つけにくい場所にある。

「ここってヒントあるのか?」

デットが呆れ顔でロザリオに聞く。

「自分で探しなよー。私は何もしないわよー」

「最低の妖精だな」

「何とでも言えばー?」

ため息をつき、壁を調べ始めるデット。調べ初めてすぐに、覗き穴と大きな穴を見つけた。

デットはその穴からブーメランを投げ入れてみた。すると、壁の向こうで何かが当たった音がした。それと同時に壁が上がってゆく。

「…なるほど、こうなっているのか」

「よくやったわ!流石ねデット!」

「お前調子乗りすぎ…」


この後も同じような仕掛けがいくつがあったりした。デットはそれを難なくこなし、そして…。


「…なんだこのパネルは…」

そう言うデットの足下には、紋章が描かれたパネル。何かのスイッチのようだが、まだその仕掛けは分からなかった。

「こんな所にあるなんて…。不自然すぎだと思わない?」

「いや、この神殿自体不自然なんじゃないか?」

デットは下を向いたまま言う。

「むー、何よー。デットったら楽しい冒険をする気ゼロね?」

「半ば駆り出されたようなもんだろ。上手く言いくるめられたり、ニアリス中を一周させられたりしてさ」

「あ、ジ○ンが来たわ」

「何…。って何故僕がノらなきゃいけないんだ…、っつーかお前三十代か…」

「妖精は長生きなのよ、だから私は人間年齢で13歳なの」

デットを振り回そうとしたロザリオを無視したデット。

「お前の事なんかに興味はないし聞いてもいない。それに自分で墓穴掘ってどうするんだ?」

 無視された挙げ句ツッコまれたロザリオ。さらに追い打ちをかけるようにそこに魔物がやってくる。

「やば…、武器を取りだしてる時間はないか…。なら、吉と出るか、凶と出るか…」

デットは、足下にあったパネルを踏んだ。すると、すぐ傍にあった穴は消え、魔物の居る地点に穴が開いた。

下の階へと堕ちてゆく魔物達。

「へー…。こういう仕掛けか」

デットは階段へと歩き出す。

「…何をしようとしている…」

「恋に落ちるというのを実演しようと思って」

「別のでやれ」

ロザリオは、パネルを踏んでデットを落とそうとしていたらしい。


上にも同じような仕掛けがあり、それを利用して上の階へと進んでいく。途中、ムーンパールという宝石を見つけ、更に上へと進む。

そして、最上階…。

 

ヘラの塔 最上階 ボスの間

ボスの間。デットはその部屋に足を踏み入れた。

「ここがボスの間か…、ってなんだこの音楽は…」

足を踏み入れた瞬間になり始めた旋律。鳴り響く管楽器と弦楽器。

周りのスピーカーから流れる高音域から低音域への流れ。綺麗に響くバッキング。

「おお!なんだか体中からパワーがみなぎってくるわ!行くわよ、デット!」

「はあ?」

確かに、何故か今までとは比べものにならないヤル気を放っている。

…ロザリオ自身は闘わないのだが。

そして、旋律に混ざって聞こえてくるカサカサとした、渇いたような何かが蠢く音。

その音の正体はすぐに分かった。部屋の中心で、巨大な、金色に輝くイモムシが暴れているのだ。


中心は他とはすこし低い位置にあり、四方の壁から降りられる。

その場所とこの部屋とには5メートルくらいの隙間があり、油断すると落とされる。

デットはその場所に降り立った。しかし、イモムシの移動速度は普通ではなかった。

その不規則さと早さにデットは錯乱され、イモムシの動きを捕捉することは出来なかった。

壁に張り付いて、矢を放つ事もあった。近付いてきた時に斬りつける時もあった。

しかし、矢は弾かれ、剣もまた弾かれ、下へと落ちてゆく。

以外や以外、イモムシの体は鋼鉄。ちょっとやそっとの攻撃ではたじろぎもしないだろう。

 ットは傍にあった爆弾を用いて、攻撃を試みたが、床に穴が開いただけで何も効果はない。万事休すかと思われた。


「デット、こんな時こそZ注目よ!」

「コントローラーの機種が違うしそんなものはない」

イモムシは法則性無く暴れているので、壁の傍にいれば危険性はかなり薄れる。

デットは考えた。イモムシを倒す方法を。そして思い付いた。先ずはイモムシを知ることが大切だと。

あの魔物は知恵の紋章を護る、いわば『守護者』。

ならば、知恵無くしては倒せないだろう。デットはそう直感した。

先ずはあのイモムシを調べる。それからどうするか決める。そう決めるとデットは走り出した。

動きながらならイモムシを捕捉することが出来た。

イモムシの体を隅から隅まで、走りながら観察した。分かったことは、尻だけが鋼鉄ではないこと。

それは、尻が弱点であると言うこと。デットは早速、尻を狙って矢を放った。

矢は尻に命中し、イモムシは萎む。さっきよりも一回り小さくなったイモムシは動きが早くなっていた。

しかし、着実に一回一回矢を当てていくデット。それに連れイモムシは萎んでいった。

だが、最後の一回はなかなか当たらない。

矢は残り12本。これを全て外したら、勝つ術は見つからなくなる。尻を狙い続けるデットに、ある光景が目に飛びこんで来る。


「…?体は小さくなっても、足は小さくならないのか…?いや、そうじゃない、足は元々があの大きさなんだ…」

デットはイモムシの体に似合わない、むくれた丸い足を射た。

一本、また一本と。時には、周りの足も巻き込んでもぎ取られる場合もあった。減って行くイモムシの足、減って行く移動速度。

そして、残り2本の矢を一本掴み、イモムシの尻目掛けて矢を放つ。

その矢は空気を斬り、ひゅう。と言う音を鳴らしながらイモムシの尻目掛けて飛ぶ。

すとん。そう言う音がした。

ぱん。何かが弾ける音がした。鋼鉄で出来たイモムシの外殻が弾け飛んだ。

 

へブラ山 ふもと

イモムシの尻は、確かに矢に当たった。鋼鉄の鎧も弾け飛んだ。

ボスクラスの魔物が死に際に放つ断末魔の叫びも聞いた。

知恵の紋章も手に入れた。

もっと清々しい気持ちになってもおかしくない筈だった。だがデットには、急がねばならぬと思い立たせるものがあった。

その正体がなんなのかは分からないが、ロザリオもそれに近いものを感じていた。

早く迷いの森に行かなければ。そう思った。サッドネスノクターン。破魔の剣。

一刻も早くそれを手に入れなければ。悪い予感がする。そう思っていた。

マジカルミラーを使って神殿の入り口まで戻ってきたデット達は、一気にへブラ山を下った。

そして、木こりの家から迷いの森へと直行した。

 

ニアリス平原

…その頃。教会の周辺には兵士達が。その奥にいるのは司祭デス。

「まさか、ここがばれたのですか!?」

「…そうです…。くっ…、間に合わなかったか…」

牧師は、床に拳を叩き付ける。

「そんな…、まだあれから一週間も経っていないのですよ!?」

ニーヤの顔は絶望に瀕していた。それは、死ではなく、一国の滅亡を危惧してのことであった。

「二週間もあれば、居場所を特定は出来ます。ましてや、国一番の軍事力を誇るニアリス国軍ならば、一週間で…!」

「そんな…」

その時、教会の扉が開いた。
 


ちょこっと修正、加筆。