ニヤ伝
勇者の章〜続きはいつもこうでなくっちゃ♪〜
サッドネスノクターン
(承前)
迷いの森 悲しみの広場
一気に視界が開けた。
そこは動物が走り、鳴いて、じゃれ合っている。もやさえなければ、最高の風景であろう。
デットはそこを走り抜け、奥に見える一際大きな台座へと足を運ぶ。
「デット、ニアディス語でこう書いてあるわ。三つの紋章を集めし者破魔の剣を与えられんってね」
「…ようやく当たりか…。これまで何回偽物を抜いたか…」
「5回、よ」
「5回も言ったのか…」
デットは嬉しさ半分悲しさ半分の顔で台座へ足をかける。
サッドネスノクターンへと手を伸ばす。その剣を掴む。上へと力を入れる。台座が光り出す。
デットは自分の全てをその瞬間に注ぎ込んだ。
光が一層強くなる。
その時、デットの持っていた三つの紋章が宙に浮きだした。
三つの紋章が共鳴しあい、互いの間に線を結び、トライフォースが形成される。トライフォースは回転し、下へと降りてくる。
三つの紋章が中心へと集まってくる。三つの紋章はサッドネスノクターンにとけ込み、サッドネスノクターンは強い光を放つ。
光が収まる。サッドネスノクターンは台座を抜け、デットの手に収まる。
さっきまでかかっていたもやが、いつの間にか消え、森の陰気な雰囲気が消えていた。
「やった…」
手に握ったサッドネスノクターンを見て、デットは呟く。
「遂に、我々の待ち望んだ、真の勇者が誕生した!その名も、勇者王ガ○ガイガー!」
「ネタがわからないからやめろ」
デットはロザリオにツッコミを入れた後、迅速なスピードで走り始めた。
「…嫌な予感がする…早く教会に行かなくちゃ…」
何がそう急がせるような気持ちになるのか、デットには分からなかった。
ニアリス平原 木こりの家周辺
森から出たデットを待ち受けていたのは兵士の大群。それぞれが攻撃態勢のまま静止している。
「・・・白刃の下を通る覚悟はとうにできてる・・・ボスに比べりゃなんて事はない・・・。」
デットは走り始める。向かってくる兵士は全員倒し、いくらか攻撃も喰らった。デットの足は完全に静止し、兵士達に取り囲まれた。
「くっ…、流石にキツいか…」
「デット、こんな時こそ回転切りよ!」
「回転切り…?そうか…!」
デットは目を閉じ、剣先に気を集中する。兵士達はそれぞれ剣と槍をデットに向ける。
目を見開き、剣を振る。槍が飛ぶ。それは同時に起こった事であった。
「回転切りっ!」
円状に波動が走る。それが起こすものすごい風に、兵士達は全員吹き飛ばされ度肝を抜かす。
デットの方へと向かってくる槍は跡形もなく消滅。
エネルギーの渦が雷を呼び、電流が地を走る。そこに膨大な熱が発生し、空気を燃やす。
その全ての現象が収まったその時、デットが中心から現れた。
デット自身、その威力に驚いたようだった。
「…これは…?」
「驚いた?これがサッドネスノクターンの威力」
ロザリオが自慢げに言う。
「…お前が自慢できるようなものではないだろ?」
「できるわよ。この剣は私のお爺ちゃんの創った剣だもの」
「…後付設定在り…と。見え透いたような嘘を言うな」
何かを伝えようとしたロザリオだったが、呆気なくデットに切り捨てられた。
「とにかく、こいつらはビビって動けないだろうな…」
「さあ、先を急ぐぞ」
教会へ向かって歩き出そうとした瞬間、後ろで何かが溶けるような音がした。兵士達の肉が融解したのである。
湯気を立ててドロドロと融解して行くそれは、骨を残して消えて行く。骨は形を失い、バラバラになって宙に浮く。
デットはその光景を目撃し、目を見開いた。
「何…!?」
骨はしばらく宙をさまよい、段々と形を形成して行く。まるで、骨だけで生きるゾンビのような・・・。
「デットよ…」
骨はダランと腕を垂らし、頭蓋骨だけが妙にけたたましく蠢く。その度にカツン、カツンと音を鳴らす。
それはデットの頭に直接語りかけてくる。
「貴殿の力、見せてもらった」
頭蓋骨がデットの脳に言葉を伝えてくる。
「…司祭デスか…!?」
デットは骨に問いかける。
「そうだ。我が輩は司祭デス。既に時は満ち足りた」
「何だって!?」
「最後に、勇者の血を捧げれば、我が輩の理想郷-フロンティア-は完璧なものとなる…」
頭蓋骨は笑う。
「我が輩の理想郷-フロンティア-を貴殿に見せてやろう。ふはははは…」
骨はそれだけ言い残すと、再度崩れ去った。デットは、沈痛な面持ちで空を見つめていた。
―やはり、嫌な予感は的中したか・・・。
とにかく、事の全貌を知るのが先だ。そう自分に言い聞かせながら、デットは走り始めた。
サッドネスノクターンを抜くシーンから。アニメで言うとここで3分くらい無駄にします(何
サッドネスノクターンの綴りはたしかSadness Nocturne…でしたよね?(聞くな