ニヤ伝
勇者の章〜続きはいつもこうでなくっちゃ♪〜
 決戦
  (承前)


ニアリス城 司祭の間

「…デットか…」

薄いカーテンに隠された祭壇の前。そこに司祭デスはいた。デットはサッドネスノクターンを強く握る。

「司祭デス…、お前の企みもここまでだ」

「ふふふ…既に時は満ちた。もうすぐ我が理想郷-フロンティア-への道は開ける…」

司祭デスは嘲る様にデットを見据える。

「…お前は何が欲しいんだ」

「そうだな…黄金の力…、トライフォースだ。さあ…デットよ、この娘がイケニエにされる所を見るが良い」

司祭デスの手に光がともる。

緑の光…。

「クーラティオー…」

「え…ちょ…おま……ネタが分からないぞ、おい、どうなってるんだ?」

デットは聞き慣れない呪文に少し戸惑う。その理由は二つある。

一つはネタが分からないのと、もう一つは異様に甲高い声だったからだ。

「これは…!?」

ロザリオが何かに気付いたようだ。

「どうした?」

「浄解だわ…」

「…浄解ってなんだよ?」

聞き慣れない単語を繰り返すデット。それに応じるかのようにロザリオが続ける。

「ラテン語主体の癒しの呪文よ。それが通じるのは別のアニメだけど」

「…あいつはアニヲタか」

「テネリタース…」

「ってあいつ続けてるぞ。」

司祭デスの手の光がいっそう強くなる。

「止めなくて良いの!?」

「いや・・・動けないんだ。微妙に神々しくて」

「セクティオー…」

カーテンの裏側で何かが激しく光っているのが分かる。司祭デスが放っている光であろう。

光に紛れて、祭壇の後ろ側に某光魔法「カッコイイポーズ」を行っている人間がいる。

それに気付くことはなかったが、足止めには成功していた。デットは祭壇の真上の方が気になっていた。

カーテンの中でもカッコイイポーズを行っている人間がいるのだろうか?デットは自分でも馬鹿馬鹿しく思えてきた。

「サルース…」

「デット!」

「駄目だ、祭壇の方に注目していたいのに、出来ない…」

デットは自分のふがいなさに現実逃避したかった。

「コクトゥーラ!」

司祭デスの呪文が終わると同時に、光も止んだ。すると、祭壇から激しい光が再びデットの注意を引く。

司祭デスは不気味な高笑いをした後、宙に浮き上がる。

デットはその光景を見て少しぞっとした。これは、恐怖なのか?それとも…?

「ふはははは…!これで我が輩の理想郷-フロンティア-への道が開けるぞ!はははははは!!」

デットよ、もはやお前の力でも止められはせぬ!我が輩は無限の力を手にするのだ!」

そう言うと、司祭デスは残像を残しながら四方のカーテンへと消えていった。デットは走り出した。追おうとしたのだ。

「何処だ…何処に行った!?」

デットは部屋の中を見渡した。どこかに抜け道があるはずだ。

「…これは!?」

一番奥のカーテンだけ、色が薄い。付け替えてはいない。ならば、何らかの仕掛けがあるのだろう。

そのカーテンをデットは触ってみた。不思議な感触だ。いや、感触などしていない。ただ、そこにあるのは空気のみ。

「…そういうことか」

デットはサッドネスノクターンを強く握り、カーテンへと突っ込んだ。
 

視界が、一変した。

 

司祭デスの空間

そこは、限りない”闇”だった。

ただ広い立方体の中に、あるのは”闇”だけ。そして、そこには2人の人間と1人の妖精がいた。

司祭デスとデット、そして妖精ロザリオ。

司祭デスは裾に何十もの線が入ったローブを着、フードを深く被り顔を隠している。

背中からは紅い翼が生えており、それは綺麗に折り畳まれている。

「…デット、気を付けて!そいつは、悪そのものよ!」

「ああ…わかってる」

デットはサッドネスノクターンを構えた。司祭デスは部屋に入ってきたデットを見据え、口を開く。

「ふふふ、デットよ、貴様は来るのは分かっていたわ」

その口調は、何も隠すことなど無いような、そんな調子だった。

「さて、そろそろ貴様にも消えてもらわねばな」

闇の中だからであろうか、司祭デスの顔がいっそう目だって見えた。

それは司祭デスの視点でも同じだった。司祭デスの眼には、デットがかなり明るく見えている。

司祭デスは黒い弾へと姿を変えた。そして、闇に紛れて消えた。

「……!?」

光の弾がデットの背中に命中する。デットは予期せぬ不意打ちに床に倒れる。

そして、第二撃が来る。

「くそっ!」

デットは飛んできたそれを避ける。間一髪。その時、油断したのだろうか。デットは移動を止めた。

結果、またもや後ろから飛んできた光の弾をかわせなかった。司祭デスはデットの目の前に姿を現す。

「このぉっ!」

サッドネスノクターンを司祭デスに向けて振るう。

それによって出来た軌道が光の筋となる。光の筋となった軌道から波動が飛び出す。波動は真っ直ぐに司祭デスへと向かう。

しかし、司祭デスは幻であった。

波動は司祭デスの幻をすり抜け、壁に当たった。衝撃で拡散する波動。それが光の粒となり、消える。

今度は後ろから雷が飛んでくる。成す術無く、デットは雷に当たり、感電。デットは片膝を着いた。

「くぅっ……」

舌を鳴らすデット。もはや勝ち目はないのだろうか?司祭デスの企みを止めることが出来ないのであろうか?

答えは、デットにも、ロザリオにも出せない。

それは、神のみぞ知ることだ。

 

「どうかね?我が輩の魔力の泉の中に飛び込んできた気分は?」

司祭デスが闇の中から姿を現す。

そう、デットは今、司祭デスの魔力が生み出した空間の真っ直中にいる。それが意味するもの……それは……、

「この空間内では、全て我が輩の思うままになるのでね」

デットはそれを聞いて驚愕した。

魔力の空間では、その空間を造り上げた者が絶対的主導権を握る。

その形は様々で、入ってきた者に毒を与えるものもあれば、入ってきた者の動きを鈍らせる者である。

この場合、司祭デスは自分に対して有利な条件にした。

それは、自分の体の形を自由に変え、自らの作り出した闇へ紛れると言う効果だ。

この空間内では魔力の探知も無駄になるし、司祭デスにいかなるダメージをも与えることは出来ない。

自分はなんて馬鹿なんだろう、此処に来るべきではなかった。

あっさりと敵の罠にはまってしまうとは…!そういう思いが、彼の心にあった。

「狼狽えるんじゃない!」

デットはいきなりの声に飛び上がった。

声がしてきた方を見ると、そこにはセント・クリストファー=イヴァリアス・ディリトン伯爵が。

デットはリラックスしようとわざと間違えてみた。

「あ…あんたは…モンテ=クリスト郷!?」

「違う!…でもいいかな、その名前。よし付け足すか」

新しい名前にウキウキして鼻の下を伸ばすイヴァリアス。

「…あんた本名なんだよ?」

「セント・クリストファー=イヴァリアス・ディリトン=寿(中略)助=リオン・ビアンノ=モンテ=クリスト郷伯爵だ!!」

目にも止まらぬ…いや、耳にも止まらぬ早口で名前を棒読みするイヴァリアス。デットは呆れかえって脱力した。

「なんだよ、さっきの5倍以上は長いじゃんか」

「それがユーモアセンスだ!」

「そんなユーモアセンスは要らない」

デットはロザリオに指摘されるまで気付かなかった。司祭デスがフリーズしていることに。

 

「今がチャンスよデット!やっちゃいなさい!」

ロザリオはフリーズして白くなっている司祭デスを指差して言った。

「…いいのか?これで…」

「正々堂々何でもアリなのよ!」

気が進まないデットであったが、倒すことに決めた。その時、イヴァリアスがデットの声を真似て言った。

「分かったぜ!今がチャンスだ!」

これが他の人間の声なら見事だと思ったかも知れない。しかしデットは何故かムカついた。

「…デットがネタに走ったっ!」

「ちょっと待て、ネタになんか走ってないぞ」

ツッコミながらも、司祭デスに向かって走るデット。

デットに攻撃される寸での所で、司祭デスは正気を取り戻す。だが、反応することも出来ずに、殴り倒された。

(やった!声優業で培った声真似が上手くいった!)

そして、またしてもイヴァリアスがデットの声を真似て言った。

「お前達が、GGGを封じようとしたのも!」

デットが、司祭デスの頭部を踏みつけ――

「え!?ちょっと、何言ってる!?」

「Gクリスタルに近づけなかったのも!」

片羽根を引き千切る!

「イヴァリアス伯爵、やめ…」

「ガオファイガーを孤立させたのも!」

拳で殴り倒し――

「だからちょっと、ねえ…」

「俺達の地球に直接攻撃しに来なかったのも!」

頭突きで打ち砕く!

「全ては、お前達が恐れていたからだ!

Gストーンの力を高め、ラウドGストーンの力を越える、勇気から生まれるこのエネルギーを!」

「神が恐れるものなどない!」

「ってお前も乗るのかよ…」

無謀な突進を繰り出す司祭デスだったが、デットが繰り出したボディブローによって地に伏せられる。

倒れ込み、無防備となった司祭デスに、デットは殴りつける。

辛うじて立ち上がった司祭デスに、回転切りをかます。

「ゲム! ギル! ガン! ゴー! グフォ! ウィータァ!」

「そんな呪文ないんですけど…ねえ、イヴァリアス伯…」

司祭デスは、既に”器”を捨てていた。

「おのれ…!こうなれば、貴様も道連れにしてくれよう!不完全な我が理想郷-フロンティア-にて力尽きるが良い!!」

 

記憶が確かだったのは、そこまでだった。


Aパートを短めに、Bパートを長めに。
イケニエの儀式シーン〜司祭デス戦。

この回は司祭デス戦が著作権侵害してるな。
まあ前編に渡って著作権侵害があるが。