ニヤ伝
来訪の章 〜朝起きたらピラミッドの上〜
水のほこら
(承前)
光の世界 カカリコ村
カカリコ村。
かつてシーカー族が住んでいた村として、伝説に登場する村である。
無論、この村自体はそうではないのだが、伝説にあやかって、とりあえずこの名で通している。
デットは酒場へ向かう。少年との約束を果たすためだ。
「確か、入り口の近くで居眠りしてる爺さんだったよな」
酒場に入ってみる。予想通り、少年の祖父らしき老人はすぐに見つかった。
デットは声をかける。
「なんですかの?」
「あんたの孫、リンクって言うんだろ?」
「はて?何故孫の名を?貴方は今までに会ったことは無かった筈…」
老人が怪訝そうに尋ねる。
「あんたの孫から、預かり者がある」
「…オカリナですか」
老人は悲しそうな表情をする。デットは、何故老人がそのことを知っているのかと訝しんだ。
「何でそのことを…」
つい、言葉が先に出てしまう。
「孫は、不治の病にかかってました。そして、医者に余命を宣告された時、私にこう言ったんです。
『僕が死んだら、このオカリナを形見に持っていて欲しい』と。
そして『僕と同じくらいの年の親族に、平和が戻ったら渡して欲しい』と。
でも、孫ぐらいの年の親族は、司祭デスのイケニエにされて、今はもういない。となったら、誰に渡せばいいのやら…」
「…不治の病にかかった時っていうのはいつ頃なんだ?」
本当なら話すのも辛いはずだ。だが、デットの意思とは裏腹に口が勝手に言葉を紡ぐ。
「司祭デスがイケニエを集め初めてからです」
「……!」
聞いて、デットは驚愕した。
「…待て、爺さん、あんたらの先祖ってのは…」
大体答えは分かっている。その昔、海の底に沈んでしまったという、ハイラルの大地で起こった、一連の事件…。
その事件を収拾したと言われる七賢者の子孫…、またはその生まれ変わりに違いない。
「…六賢者を統べる七人目の賢者の生まれ変わりです」
やはり…。と、デットは思った。
「世界観がごっちゃになってるな。司祭デスの陰謀か?」
「じじいの話を『司祭デスが〜』まで聞いた」
「ゼル伝はゼル伝、こっちはこっちだからごっちゃにしなくていいっつーの」
…ちっ…。
「頭大丈夫?作者。アルツハイマー病にでもかかってない?」
「薬切れだろ、絶対」
「…そうだ。貴方が持っていて下さい。平和が戻る日まで、イケニエにされた親族が戻ってくる日まで。
村の中央にある羊の像の前でオカリナを吹くといい」
「…わかった」
光の世界 カカリコ村中央 ウール像手前
外へ出て、羊の像の前でオカリナを吹いてみる。
さっきの少年が吹いたメロディを。死ぬ間際に残したメロディを。
イヴァリアスが後ろで歌詞を付けて歌っていた。
何時の日にか 何時の日にか 旅立つ日が 来るけど
その時まで 待ち続けよう 恐れなんか 無いんだ
吹き終えると同時に、羊の像が壊れていく。
真鍮で出来た羊の像は、その外殻を脱いでいく。
その姿はまるで、生き物のようだ。
生き物?
真鍮の像から現れた羊は、デットを乗せて走っていく。
大通りを走り、どんどん早くなる。
やがてそれが臨界点を越えた時…。
―テレポート―
気が付いた時には、ニアディス湖の水門前にいた。
水のほこら ボスの間手前
水のほこら…。第二の賢者が封印されし場所。
デット達は、その場所にいた。
「この扉の向こうだな」
デットが神妙な面持ちで言う。
「そうだね。ていうかまた謎解き省略されてない?」
「シープの登場シーンとオカリナというサブイベントの所為で潰れたんだってよ」
ロザリオの問いに対してデットが答える。
「それなら書かなきゃいいのに…」
「デット達に移動手段を与えてやらなければと思った結果だそうだ」
「謎解き書きたくないからだな絶対」
「だろうな」
デットは扉を開ける。
その部屋へと赴く。
「…何もないぞ?」
「いや、いる」
「…?」
デットは何が何だか分からない様子だ。
「上、だ」
「……!」
イヴァリアスに促されて、デットは上を向く。そして、驚愕した。
「ワート!」
天井から落ちてきたその”目玉”は、体の回りに泡をくっつけ、ゆっくり途中を浮いている。
何も攻撃してこないのを見ると、防御中心のボスのようだ。因みにムジュラでは中ボスに成り下がっている。
「ロザリオ、フックショットを出せ」
「あ、デット攻略本見たわね?」
「見てねーよ」
フックショットを受け取る。今までのパターンでは(と言っても実際に戦闘で使える武器は弓矢しか手に入れなかったが)、
その神殿で入手した武器を使ってボスを倒せた。だとすれば、フックショットで倒せるはずだ!
フックショットとは、スイッチを入れることで中に仕込まれたバネが伸び、先端のフックが飛び、
攻撃したり物を引き寄せたり行きたい所にいけるという優れものである。
勿論、凄く硬いバネである。因みに、フックを撃つからフックショットなのである。
「狙いは…泡だ!」
泡に向けてフックショットを放つ。鎖が伸び切り、その状態で止まる。もう一度スイッチを押し、鎖を巻き取る。
それに伴い、泡がこちらに飛んできた。フックに引っかかったのだ。
「割れない!?」
ワートの泡は、耐久性に優れている。フックが刺さったくらいで割れはしない。
泡は飛びはね、ワートの身体に戻っていった。
「…倒し方は分かった!」
フックショットをワート目掛けて放つ。泡を引き寄せる。泡を剣で斬りつける。泡は音を立てて割れる。
それを延々と続けていった。
そして、ワートの額に付いている一際大きな泡を引き寄せ、切ろうとしたその時…
「止めてデット、それを切らないで!」
はっとしてデットは剣を止める。
泡の中にクリスタルが入っていたのだ。
泡はワートへと戻っていく。
「くそ…!」
デットは悪態をつく。
ワートの額の泡の中から、クリスタルがワートの身体へと埋め込まれていく。
「デット、急いで!賢者が取り込まれちゃう!」
「わかってるよ!」
デットは剣を構える。目を閉じ、剣先に力を集中する。
「ちょっと揺れるけど、我慢しろよ…」
その言葉は、ロザリオやイヴァリアスに向けられたものではなかった。
デットは剣を振るう。
剣の軌道が、光を放って飛んでいく。尾を引いてワートの額へ一直線に飛んでいくそれは、泡に命中し、光の粒となって消えた。
泡は、光の粒と一緒に消えていった。
デットはクリスタルに外傷は無いのを確認し、フックショットを構える。クリスタルは既に半分以上埋まっている。
「狙うは・・・クリスタルと肉の境目!」
デットはフックショットを放つ。それは、デットの狙った場所へとクリーンヒット。フックが肉へと食い込み、そのまま止まっている。
デットはスイッチを入れる。鎖を巻き取る音が走り、デットはワートの額へ向かっていく。
「ロザリオ、イヴァリアス!受け止めろ!」
「わかった!」(ロザ)
「よし!」(イヴァ)
「最高だ!」(ロザ)
「ルロイかよ・・・ってそこ何右の親指立ててんだよ千葉県版の教科書(中三)持ってない人に通じるネタか?
というか絶対一部の人にしか伝わらんぞ」
デットはツッコミながら、フックショットを左手に持ち替え、右手に剣を持つ。そして、クリスタルをえぐり出す。
クリスタルは宙を舞い、落ちてゆく。
ロザリオとイヴァリアスは、クリスタルをキャッチした。
「よし・・・!」
左の支えを失ったデットは、その場を落ちていく。その最中、デットはソードビームを放った。
それは、ワートの目の中心から身体を斜め方向に切り裂いた。その時、デットは笑みを浮かべた。
デット達はその場に立ちつくし、ワートの断末魔を見守っていた・・・。
オカリナイベント後半〜ボス戦まで。