ニヤ伝
髑髏の章 〜モスラにご用心〜
(承前)
闇の世界 髑髏の森
ふと、耳元でロザリオの声がした。
「デット、デット!」
「あ…ああ、ごめん、ちょっと考え事してた」
「ここから北東に行った所に入り口があるから、そこから神殿に入って」
デットは、ライムの導きに従い、北東を目指す。
髑髏の口が大きく開いている。これが入り口だろう。だが、ここから入るべきではないとライムが告げている。
「もう少し奥の方」
デットは、骨がトンネルのように覆い被さっている所を通って、突き当たりに来た。そこには、神殿の入り口が。
「ここだよ」
デットは、神殿に入っていった。
神殿の中には、ミイラがうようよいた。それに混じって電気クラゲのようなモンスターも。
サッドネスノクターンで斬りつける。だが、ミイラの体は固く、刃を通さなかった。
「成る程…確かに役に立つな…」
ボンバーのメダルを握りしめ、サッドネスノクターンを掲げる。
周囲を巻き込む爆発が起こる。炎が広間を満たす。
ミイラは全身に巻かれた包帯が焼けていくのを見、熱に耐えきれずに倒れた。そして、砂へと還る。
入り口から向かって正面の扉は閉まっている。ならば、スイッチが何処かにあるはず。
それに、動かせる彫像があるからには、常に何かが乗ってないといけないらしい。
通行に邪魔な頭蓋骨の壺を壊す。案の定、中からスイッチが出てくる。彫像を動かし、スイッチの上に置く。
そして、正面のフロアへ行く。
もう一度ボンバーを使い、ミイラを灼く。部屋の中央にある宝箱を開ける。そこには、大きな鍵が入っていた。
「外に出て、さっきの入り口の近くにあった草村を調べてみて」
デットはそれに従った。草村を調べた。
すると、落とし穴を見つけた。ライムによると、そこへ落ちろと言うのだ。デットは言うとおりにした。
「左の壁を壊して」
デットは爆弾を使い、脆くなっている壁を壊した。
「穴が開いてるから、落ちないように気を付けて」
「それを早く言ってくれ…」
デットは東の神殿の時の失敗を繰り返した。学習能力の低さが見て取れる。
「黙れナレーター」
苛立ちを抑えながらデットが言う。そうしながらも、レバーを見つけ、それを引く。
すると、後ろの壁が崩れていくのを感じた。
轟音を立てて爆発を繰り返し、瓦礫が散らばった廊下が現れた。
デットは廊下を渡り、大きな宝箱を開けた。中身はファイアロッド。小さな炎を操るすべだ。
もと来た道を戻り、通路のある南側へ行き、宝箱からマップを入手。
西のフロアへ向かう。南のドアには鍵がかかっていた。そして、行った先は神殿の入り口だった。
「一旦出て、最初入った所に戻って」
デットは神殿を出て、先程の入り口へと向かう。
ライムによれば、入り口から見て西の通路へ行けとのことだ。この先必要なもの名のだろう。
「そのまま真っ直ぐ」
通路を真っ直ぐ進むと、入り口が見えた。ここのフロアの端にある髑髏の壺を調べろとのこと。
調べてみたら、中には鍵が入っていた。それを取れと言っているらしい。
取った後出入り口へ向かえとライムは指示している。デットは神殿の外へと向かった。
The Place(そのばしょ)
「ジーグロック、ワートがやられたか…」
闇に浮かぶ顔が言う。
「そうです。あいつらは既に3人目の賢者を救い出そうとしています」
「だが、あそこは一筋縄では行かん…、やつらとて手こずるはず」
「ですが、水の賢者の手助けを借りているらしいですよ」
「案ずるな。最早準備は整った。闇の力の通り道を開けるようになるのは、後僅かな時間を費やせばいいだけ。
それまで動けなかったが、その時から奴らを始末するために動くことだって可能だ」
「しかし、その僅かな時間が命取りになる可能性が…」
「たかが三日三晩で賢者を全て救い出せるはずがない。ましてや、これから先さらに苦しくなる。
森の賢者は勇者には特別だ。急ぐ必要があっただけ。本当はあそこが一番難解な場所なのだ」
「ですが、仕掛けだけならこれから先の方が複雑なのでは…?」
「そうだ。だが、森の神殿は森自体が複雑なダンジョン。
入り口がどこで、どの穴に落ちたら何処に行けるかを分からなければ先へなど進めないだろう?」
「そうですね」
「お前が言ったとおり、仕掛けだけならこれから先の方が難解だ。
今回は賢者のヒントを得て結論を出している。次からはこうはいかないだろう」
男は笑った。それに釣られてもう一人の男も笑う。
それは勝ち誇った笑みであり、残忍な笑みであった。
闇の世界 髑髏の森 神殿入り口
デットは、モンスターの首のような骨を見た。
「この骨に炎を」
デットはファイアロッドを振る。すると、ファイアロッドの杖先から炎が飛び出した。
炎は骨に当たり、骨は音を立てて燃える。骨ではなく木だったようだ。木はやがて燃え尽き、神殿への入り口が出来た。
入り口を塞いでいた木が消えたことにより、入り口の骨は新たな印象を与える。
木が燃えるまでは魔物の胴体にしか思えなかったが、木が燃えた後で見たら、巨大な魔物のしゃれこうべのようにも思えた。
「真っ直ぐ行って。鍵穴があるから、そこで鍵を使って」
ライムの言うとおりに進む。鍵を使い、先のフロアへ移動する。
一歩踏み出すと、穴の位置を変えることが出来るパネルを見つけた。
どうやら、それらを踏んで進まないといけないらしい。巧みに動き、デットは次のフロアへと歩を進める。
「全部の燭台に火を付けてみて」
デットはボンバーを使ってみた。3つの燭台に火がついたが、距離の所為か最後の一つに火がつかない。
デットはそれをファイアロッドで補った。
北西にある扉が開いた。燭台の火が消える前に次のフロアへ行き、すぐさまボンバーを使った。ミイラが数体いたからだ。
「行き止まり…?」
ロザリオはいかにも落胆と言った表情でデットを見る。
「その目は僕に何か言っているのか?」
「なーんにも」
「何だそのムカつく言い方」
デットは部屋を調べ始める。一分かした頃、デットは部屋の入り口から向かって右の方のツタが怪しいと感付いた。
ツタを剣で切る。すると、通路がそこから現れた。デットは通路を通った。
「もうこれ部屋に入ったらボンバーって当たり前になってきてるな」
「そうしないと危ないでしょ」
「この上なく正論だな。ゲームだとメーターが危ないけど」
焼け焦げたミイラは鍵を持っていた。デットは鍵を使い、右の方向にある錠前付きの扉を開いた。
そこには中央に巨大な穴があるだけだった。他には何もない。
「…どういうことだ?」
イヴァリアスがその一言を発した途端、デットは気付いた。
「…この下に……」
デットは意を決した。ボスを倒さなければ、賢者を救うことなど出来やしない。
髑髏の森 森の神殿 ボスの間
穴から落ちた先には、巨大な蛾がいた。
蛾はこちらを見据え、その派手な羽根を広げた。
その時、奇妙な模様が描かれた床が動き始めた。右へ、左へ、不規則に向きが変わる。
それに釣られて、その空間の四隅に置かれた針の付いたブロックが動き出した。後ろへ、前へ、右へ、左へ。
針を避けるので精一杯だったデットは、蛾の口から発せられる3方向に伸びるビームを避けられなかった。
「3WAYビーム!?」
「いや、カービィネタで行くならプラズマレーザーだ!」
「エアライド持ってない人にはわかんねーよ」
デットは、ボンバーを握りしめた。そして、サッドネスノクターンを掲げる。
―ボンバー……―
炎の柱がデットを中心にして円状に広がっていく。その状態でデットはサッドネスノクターンを振るった。
巻き上がる業火は刃となり、その蛾―ガモース―を襲う。ガモースはそれを難なくかわす。
デットはガモースが視界にはいるように移動し、サッドネスノクターンを二回振る。
周りで巻き起こっている炎の柱から二本の刃が飛び出し、執拗にガモースを狙い続ける。
それを気にも留めずガモースは的確にビームを撃ってくる。
ビーム単体の威力は少ないが、ガモースの動きが早いためそこはカバーされる。
「デット!忘れないで!」
「忘れるワケ無いだろう」
デットはただがむしゃらに攻撃しているわけではない。
ガモースの額のクリスタルに当たらないようにちゃんと狙って撃っている。
それに、今回の賢者は特別だ。忘れるはずがない。
デットは回転切りの構えを取った。サッドネスノクターンの刀身から熱が感じられる。
炎が周りに集まってきているのだろう。デットは溜めたものを一気に放った。
「回転切りッ!」
空気が燃える音が怒号のように鳴り響く。サッドネスノクターンの軌道が炎によって延長される。
綺麗な円を描き燃えるそれは、ガモースの片羽根を燃やす。
ガモースは地に落ちた。
デットは片羽根を無くし、最早そこから動けない状態のガモースを見下ろす。
額にはクリスタルが埋め込まれている。デットは傍にあった針ブロックの針を一本抜き、クリスタルの傍に突き刺す。
そして、ぐりぐりとえぐり出す。
ガモースは奇声を上げ、暴れる。
が、デットがファイアロッドで手足と羽根を斬り、それらを燃やしておいたため、起きあがることなど不可能だった。
クリスタルをえぐり出した後、デットはその毛むくじゃらの物体を見て、ファイアロッドを振った。
ガモースは燃え尽き、後は真っ白な灰だけが残った。
「ふ…燃え尽きたぜ…、真っ白にな……」
そんな声が聞こえたような気がした。
森の神殿攻略〜ガモース戦。