ニーヤの伝説
〜愛のデトニヤ劇場☆(待て〜
勇者の章〜続きはいつもこうでなくっちゃ♪〜
サッドネスノクターン
けたたましい音と共に開かれた教会の扉。その向こうにはニタニタと不気味な笑みを浮かべた司祭デスの姿があった。
司祭デスは一歩ずつ、コツン、コツンと音を鳴らして教会へと足を踏み入れる。
”闇”が教会を埋め尽くす。開かれた扉から入ってくる光を遮る。
牧師はニーヤを腕で制し、司祭デスとニーヤの間に立った。
ニーヤと牧師、両者の顔はまるで死病を宣告されたような表情をしていた。
何分経過しただろう。この緊迫した空気の中では、時間は通常の2倍以上遅く流れていると錯覚してしまう。
教会はそんなに広くはない。走れば5秒で端まで届く。
だが、司祭デスはゆっくり、一歩一歩を静かに、足音を鳴らして歩いていた。
そして、教会の半分を超えた時に、司祭デスはそのにやけた口を開けた。
「おや、これはこれは。姫様、そんな所へおいででしたか」
司祭デスの口から言葉が発せられる。”闇”が声を反響させる。その声はある意味、死を宣告されるよりも恐怖感を与えるだろう。
「さあ、姫様。王様がご心配なされてます。お城へ帰りましょう」
司祭デスの口元が上へ、上へと上がって行く。
あの男は嘘をついている、ニーヤはそう思った。
邪魔だてするものは殺す。それがあの男だ。今頃父親も母親も、殺されているに違いない。ニーヤはそう直感した。
「王妃様もお待ちでございます。さあ、帰りましょう」
ニーヤは、絶望と恐怖に駆られた目で司祭デスを見た。そして、口を開く。
「嫌です。貴方とは行きません」
「では、歩いて帰られるというのですか?外界は魔物が居て危険ですよ?
それに、姫様の命を狙う悪人が、何処かに潜んでいる可能性もありますからね……例えば、迷いの森とか…?」
迷いの森。その単語を聴いて牧師とニーヤが反応した。デットは今紋章を集めに行っている。そして、三つ全てが揃ったとしたら…。
今居るのは迷いの森。サッドネスノクターンを取りに行っている頃合いだ。
「大丈夫です…、そちらの方の手は打っております」
「…!今、何と…?」
ニーヤが聞く。
「聞こえませんでしたか・・・。手は打ってあります、そう言ったのですよ、いいですか?」
「…デットに…何をしたんですか…?」
「ほお…、あの男、デットって言うんですか。覚えておきましょう。
…さて…、どうしても動かないっていうのなら仕方がない…。見せしめに1人殺してやろう…」
司祭デスの口調が豹変した。牧師は後ずさりする。それにつられてニーヤも。
「よーく見ておくんだな…我が輩の力を!!」
司祭デスはしゃがれた声でそう言うと、両手を斜め上へと引き上げ、呪文を唱え始める。
闇が空間を呑み込む。視界が闇に遮られる。
「ゲムギルガンゴーグフォ…」
「…なんでヘルアンドヘヴン…?」
ニーヤが疑問を投げかける。
「作者の趣味でしょう…」
「嫌な趣味ですね…。ネタが分かる人にしか分からないこのみっともなさ…せめてピーリカピリララとかに…」
「それは黒魔術っぽくないですね…。エロイムエッサイム辺りで…」
牧師が拍子抜けした顔で言う。
「いや、それも駄目でしょう。」
司祭デスの両手が光る。光が牧師のもとへと走る。
更にその光は牧師の体を持ち上げる。光が一瞬強くなる。放射状に紅い光を撒き散らし、牧師は床に叩き付けられる。
司祭デスは、その様子をニヤけた顔で見ていた。
一方その頃、迷いの森…。
迷いの森
「…なんでこの森に兵士がいるんだ…?」
息を切らしながらデットが言う。
「知らないわよ、どうせこの森も探してるんでしょ」
「にしては数が多すぎるぞ・・・」
デットは木陰から巡回する兵士に見つからないようにしてもたれている。
ロザリオはサッドネスノクターンのある場所を探しているようだった。
その時。
「おい!見つけたぞ!」
その叫び声と同時に、数人の兵士が飛び出してきた。
デットは、「まずいぞ…」とだけ言って、走って逃げる。
剣はさっき落とした。マジカルミラーで入り口まで一気に戻ったから回収していない。
つまり、デットは丸腰。あるのは残り一本の矢と盾のみ。
デットはすかさず近くにあった台座から剣を引き抜いた。
「やった!サッドネスノクターンだ!…と思ったら残念、偽物だった…」
「…デットがネタに走ったっ!」
「…勝手に言葉が出たんだよ…」
台座から剣を引き抜いた瞬間にデットの口から発せられた機械的な言葉。
気を取り直してデットは引き抜いた剣で兵士を攻撃する…が。
「…折れたぞこれ…」
何と言うことかサッドネスノクターンの偽物は打ち損じの剣らしく、軽く叩いただけで折れてしまった。
やむを得ず剣を投げて牽制するデット。
ひるんだ隙に森の奥へと進んでいく。丸太を抜け、草をむしり、時には偽のサッドネスノクターンを引き抜いた。
その度に「やった!サッドネスノクターンだ!…と思ったら残念、偽物だった……」と言わなければならない所が嫌だったが…。
「行き止まりか…」
デット達は四方八方木に囲まれた場所へと来てしまった。
木と木の隙間は人が通れる程のものではない。右には台座が、左には何に使うかよく分からないキノコが。
キノコは口では形容しがたい匂いを放っている。
そして兵士が数人入り込んでくる。デットはキノコを採り兵士に投げつけた。キノコは兵士に命中。
更に酷い匂いを撒き散らした。その匂いに当てられた兵士達はその場に立ったままで、ユラユラと蠢いている。
どうやら、このキノコは魔法のキノコらしい。デットは自分の真後ろに丸太が置いてあることに気付いた。
その丸太は中身がくり抜いてあるため、通れる。
丸太を通り、もやがかかった森を更に奥へと進む。
そして…。
Bパートへレッツらゴー(何