ニーヤの伝説
〜愛のデトニヤ劇場☆(待て〜

来訪の章〜朝起きたらピラミッドの上〜
  水のほこら


闇の世界 闇の神殿入り口

神殿から出た先に、一人の男がいた。

「あんたは…?」

デットは、目の前にいる男にそう問いかけた。

「僕かい?僕は…」

「シークでしょ」

男の言葉を遮り、ロザリオが言った。

シークとは、ゼルダの伝説時のオカリナに登場したシーカー族の生き残りとかほざいてる男(とは言えない)で、

その正体はゼルダ姫なのであるが、この小説で語るには正直言って無理がありすぎる。

「シークじゃない。僕の名はシープだ」

「…羊?」

「そう、羊」

デットは思った。一文字変えるだけでこんなにも印象が変わるものなのか、と…。

「…デット、食っちまおうか?ラム肉にして」

「ラムは雌の羊だぞ。因みに雄の羊の肉はマトン」

「…ジンギスカンでいいか」

何やらブラックな話をしているそばで、シープは口を開く。

「…サハスラーラは信用できない」

「ああ…いたなそんな奴」

「大して役に立たない奴だろ?」

「なんかボケ始めてたしな。ぶっちゃけるとあの人の話嫌い」

「元々信用してないって。あいつの話はまあ他の人の話と比べてネタに出来るくらいなもんだから」

(…くっ…!なかなか強いな…)

そういう心の声が聞こえたような気もしないでもないが、デットはとりあえずスルーした。

「それにな、賢者の娘達の話のほうがためになるんだよ。

トライフォースの話だってあのジジイの話と娘の話で大きく違ってたし」

「うん。あの爺さんの話では司祭デスはトライフォースに触れなかったことになってただろ?

実際はトライフォースに触れたからこんな世界が出来て、さらにその力で光の世界をも支配しようとしてるわけだ」

「奴の理想郷はもう既に出来てるわけなんだけど、司祭デスが満足してないから不完全なわけで。

勇者の血って言うのも奴の思いこみな可能性が高いしな」

デットとイヴァリアスの猛攻にシープはたじろぐ。

(…じゃあ僕は何のために…)

またしても心の声が聞こえてきたような気がしてきたが、デットはまたスルーした。

(…さっきから私の出番がない…)

後ろからも心の声が聞こえてきてるが、ツッコまない事にした。

少しの沈黙の後、シープは苦し紛れに声を出す。

「…デット、君の家の西にある動物の広場には行ったか?」

「いや、行ってない」

「行ってみるといい。旅の役に立つものが手にはいるはずだ」

「・・・ああ、行ってみる」

シープは頷き、次の言葉を発する。

「それと、神殿のボスの身体にクリスタルがはめ込まれていただろう?」

「…はめ込まれてたな」

「他の神殿のボス達もそうだ」

聞いて、デットは驚愕する。

「なんだって?」

「今回はイヴァリアスのお陰でクリスタルを傷付けずに倒すことが出来たが、次は上手く行くかどうか…」

「…ボスの度に著作権侵害をするのは嫌だ」

自分の真っ直ぐな気持ちを口に出すデット。

「僕も嫌だ。正直に言ってね…」

(ネタがわからないけどな)

仏の顔も三度まで…とは行かない。多分、絶対に。

デットは無視した。

「もしクリスタルを壊してしまったら、どうなると思う?」

「賢者の娘が死ぬ」

「そのまま」

「破片が痛い」

デット、イヴァリアス、ロザリオの順で口々に答える。

その回答に、正しいことなど微塵も存在しなかった。強いて言えば、近いのはデットだけだった。ロザリオなど論外だ。

「…少しは空気読んで真面目な回答しろよ、ロザリオ」

「あ、作中で初めて名前呼んでくれた♪やったー」

「関係ないだろ、少なくとも今は」

シープは何故か言いようもない孤独感に苛まれた。

「…聖地、いや闇の世界は、その者の心の姿を映す。

例えば、ロザりんは自分が望む体型に、イヴァリアスなら二次元にしか通用しなさそうなビジュアル系の顔に、

この小説の作者ならカッコいいアニメの主人公になるんだ」

「それは分かったけどセリフ消されてるぞ」

「で、それが何になるんだ?」

デットはツッコミを入れたが、イヴァリアスは敢えてスルーしたようだ。

「あ、分かった。デットの心の姿が映されていないのはムーンパールを持っているから。

賢者の娘達がそのままの姿なのはクリスタルに閉じこめられているからで、

クリスタルを壊してしまったら心の姿が映されて、力が無くなっちゃうんじゃないのかな」

「正解だよ、ロザりん」

ロザリオは喜び、一々巨人の仮面を付けて巨大化し、飛び跳ねる。

「…普段空気読まない奴がこんなので目立っていいのか?」

「猫被ってただけだったり…」

「というよりも何であやしの砂漠で見た時と容姿が変わってないんだ?」

「ロザりんにとってあの体型が一番望むものだったってことか…」

シープはどさくさに紛れてその場から立ち去った。

よく見る目眩ましのようなものを使って一瞬で消えるというのをやってみたのだが、誰も見ている者などいなかった。

「あれ?シープがいない」

「…何しに来たんだよ作者」※:羊乃さんです

「ゲスト出演の癖に贔屓しやがって」

思いやりが違う、 思 い や り が 。イヴァリアスは色んな意味で面白いが。

デットも元々ゲストキャラなんだからな。

「ナレーターが五月蠅いから早く行こう」

 

闇の世界 裏の地上

デットは、光の世界で言うデットの家の西にある動物の広場へ向かい、そこで一旦光の世界へ戻った。

「あ、何か聞こえる。なんだろう…優しい音色…」

「オカリナ…?」

その音色に心を奪われるが、それは一瞬にして崩れ去る。

「あの人が吹いてるのかな」

「いかにも、動物好きな少年って感じだな」

少年が切り株に座ってオカリナを吹いている。それに合わせて、動物たちが走り回っている。

「何も変わった事なんて…」

デットがそう言いかけた瞬間、少年が消え始めた。

「何!?」

無意識に身体が動いていた。

だが、間に合わなかった。

「あのオカリナは時のオカリナだったのね…」

「そんなわけ」

「ねーだろ」

「このウスノロハゲチャピンダイナマイトバカが」

「まだ糸引いてるな」

「案外小さい男だったんだね…」

とりあえず闇の世界に戻ってみる。

そこでも、オカリナの音が聞こえてきた。しかし、先程のオカリナの音とは違い、弱々しい音色だった。

「…そういうことか…」

「私も分かった…」

横でブーブー文句たれてるリヴァイアスイヴァリアスを尻目に、デットとロザリオは切り株のあった場所へと向かう。

少年のいた切り株のあった場所には、オカリナを吹いている狐がいた。

少年は、デットに気付いたのか、オカリナを吹くのを止めた。

「君は…誰だい?」

その声は弱々しいものだった。

「僕はリンク。昔この国を救った伝説の勇者にあやかってこの名前を付けられたんだ。だから緑の服なんだ」

「僕はデット。どうしてこんな所に?」

「オカリナを吹いていたら、いつの間にかここにいたんだ」

少年はデットの問いに答える。

「…大丈夫か、弱っているみたいだが」

「どうせ僕は助からない。不治の病にかかってしまってるんだ」

少しの間、沈黙が流れる。

「そうだ。これを、カカリコ村の酒場にいるお爺ちゃんにわたしてくれないか?」

そう言うと、少年は蒼いオカリナを差し出した。デットはそれを受け取ると、一言返事をする。

「…ああ」

「最後に一曲、演奏させれくれ」

そう言うと少年はオカリナを吹き始める。

演奏を終えた所で、少年はデットに語りかける。

「入り口の近くで、居眠りをしているのが僕のお爺ちゃんだ。頼んだよ…」

言って、少年は事切れる。

しかし、その瞬間は仰々しいものであった。

先ずは足から、みずみずしい肌から水分が失われていき、皺だらけの醜い異形に変化していく。

皮膚が指先から硬質なものへと変化していく。先程まで肌の色をしていた身体が茶色い、皺だらけの身体になっていく。

被っていた帽子ははらりと脱げ、ひらりと宙を舞いながら落ちていく。足の皮膚が切り株と同化していく。

そこまで見てデットは、一つの結論に辿り着く。

「・・・もしかして、ガノンの呪いを!?」


シープとの会話〜オカリナイベント前半まで。

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