ニーヤの伝説
〜愛のデトニヤ劇場☆(待て〜
沼の章〜底無し沼にハマるのは底無しの馬鹿〜
闇の世界 炎の神殿 神殿解放後
「デット、貴方のおかげで、魔族の手から逃れることが出来ました…。ありがとう…」
現れた賢者の第一声。デットとロザリオは安堵する。イヴァリアスは狂っている。
「私の名前はメル。炎の賢者、ダルニアの子孫です」
「ダルニアはゴロン族の筈なのに人間だな」
どうでも良いことに対してデットはツッコむ。イヴァリアスは後ろで踊っている。
「せめて面影くらい…ねえ」
「どこに?」
「…お腹?」
「面影が無くて正解だったな」
「ニヤディスの民は、不思議な力を操ることが出来たと言います。七賢者もそうだったのです」
その場の空気とは全く関係無しにメルが言う。
唐突な気もするが、そう言うことには慣れている。デットは話を元に戻した。
「七賢者…」
「…でも、長い年月の間にニヤディスの血は薄れ、七賢者の血を引く私達も強い力はありません」
「それでも、司祭デスのイケニエになった…」
司祭デス…いや、ガノンは、七賢者をイケニエにすることでトライフォースを手に入れようとした。
でも、何でガノンは司祭デスを使う必要があった?
自分の分身を使う必要が何処にある?
「……聖地の扉を開くのには十分だったのです。司祭デスにとっては…」
「それほどの力を持っていたのか」
一瞬の沈黙が生まれ、再びメルは口を開く。
「ですが、勇気を司るウールの力があれば、知恵を司る賢者の力もより大きくなるはずです」
ニアリスの三つの力。この国ニアリスは、その三つの力によって治められている…そうガルドさんが言っていた。
一つめは勇気。二つめは力、そして三つめは知恵。
それらはニアリス国家の基本理念であり、聖地に治められたトライフォースの、三つの三角を表しているものだった。
一番上の三角は勇気、右に力、左に知恵。
学説によれば、右手は力を、左手は知恵。そしてその力と知恵を束ねるのは勇気、という意味合いらしい。
その影響もあってか、修行の場である三つの神殿にはそれぞれを象徴する紋章が納められていた。
勇気を司るのがウールの一族、知恵を司るのが賢者の一族ならば、力を司るのは砂漠の民…。
「ニアリス城に出来た、光の世界と闇の世界を繋ぐ道が完全に開くまで、あまり時間はないです」
「……」
「ガノンを倒せば、この闇の世界は聖地へと戻り、トライフォースはまた、次の持ち主が現れるまで眠りにつくはずです」
その後にすべきこと…それはデットが一番分かっていた。
トライフォースの持ち主になることだ。
「頑張ってください…」
「ああ…」
「勇者の行く道が、トライフォースへと導かれますように…」
闇の世界 炎の神殿入り口
神殿から出ると、目の前にシープがいた。
前回無視されたのにもかかわらず出てきたのには敬意を表してもいいくらいだ。
「これで、五人目の賢者が救われた…」
シープが言う。
「ああ…」
「次に助けることになる賢者の居場所は分かっているな?」
次の賢者。次の神殿。そこは、光の世界で言うあやしの砂漠にあるらしい。
イゲルの情報が確かならば。
「ああ。ここからただひたすら東に進めばいい」
「いや、その必要はない」
その言葉に、デットは少々驚いた。何しろ前回は話を全く聞いていなかったため、ワープの曲も覚えていなかったからだ。
氷のコンチェルト。奏でし者を魔の湖へと誘う調べ。だがそれはロクに使われることはなかった。
「きくがいい。その者を悪のはびこる沼へと導く交声曲を、沼のカンタータを」
湖にハープの音が鳴り響く。
デットはそれと同じ旋律を奏でる。
オーケストラが旋律に入ってきて、その後に様々な人間の歌声が響く。
その旋律は美しく、暗く、情熱的な旋律であった。
演奏が終わった時、オカリナの周りには光が回転していた。
そして、演奏が終わってのデットの第一声。
「交声曲って死後じゃないのか?」
「死後ね」
そんなことはどうでもいい、そう言いたそうな顔をするシープ。
「必ず、ガノンを倒してくれ」
二、三歩引き下がり、デクの実(時オカ使用)を投げる。
視界が一瞬だけ白一色になり、再び見えるようになった時にはシープはいなくなっていた。
デットは、シープがいた空間をただ見つめるだけだった。
光の世界 ニヤディス湖
沼のカンタータ。
奏でし者をあやしの砂漠へと導く曲。
その曲を、デットは奏でた。
遠くから羊の鳴き声が聞こえる。前回と同じか。…牛は泳げるのか?
だが、やって来たのはゴツい男。やたらゴツい。ゴツすぎる。ゴツいと言うだけじゃ物足りないくらいゴツい。
ゴツいに固執しているようにも思うが、本当に固執しているのでツッコまないで欲しい。
「め〜」
そのゴツい男が、見かけによらずやたらと高い声…いや、本物の羊としか思えないくらいその声は似ていた。
もう本物と言っても言い。声だけ。
「…こいつ……?」
「みたいだけど…本当にいいの?」
ゴツい男は、殆ど羊と言ってもいいようなその声でフンフン言いながらポーズを取っている。似合わない。いくら何でも似合わない。
しばらくして、ゴツい男はデットに背中を向け、お辞儀をする。お辞儀ではないだろうが、お辞儀に見えた。
「乗れ…ってこと?」
「多分…」
デットは乗らなかった。こんなのに乗るくらいなら走っていった方がマシだ。そう思った。
ロザリオもそうらしかった。
「…いつまで巨人の仮面付けてんだよ」
他にも色々ツッコミ所はあった。何故無傷なのかとか。目の前にいるのが何で姿を変えているのかとか。
ツッコんだらキリがないからそのままにしている。それだけだ。
「いいじゃん別にー減るもんじゃないでしょー。魔力は減るけど」
いつまで経っても背中に乗らないデット達に業を煮やしたのかは分からないが、ゴツい男は催促する。
「めーめめめーめめーめーめめーめー」
一瞬だけ、空気が固まった。
「めー?」
「喋れないの?」
ゴツい男の禿げ頭…いやスキンヘッドから毛が生えてきた。しかもそれは徐々に早くなっていく。
演奏記号で言えば、アッチェレランド。徐々に早く。そんなことどうでも良いとは言わせない。
男の身の丈程になり、それでもなお伸び続けていき、うねうねし始めた毛はデットの足に巻き付く。
「…ええ!?」
さらに毛は伸び、デットの手足を捕まえる。前身が捕まるまでそう時間はかからなかった。
ロザリオは毛からデットを引き離そうと、毛を掴む…が、すぐに離してしまう。ロザリオの手には何かヌルヌルしたものが。
「……これ…油?」
ロザリオが怯んだ、その隙に毛はロザリオの手足を捕まえる。
毛を振りほどこうとして、ゼル伝シリーズ屈指の必殺技であるアレを発動させるが、何故かゴツい男には効かなかった。
無数のコッコが毛に捕まえられ、めきめき…という音がステレオで再生される。
ロザリオは気を失った。
たまには みじかくたっていいじゃない にんげんだもの
最近のAパートの長さはキツいと思うな。
前半でそんな書けないって